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ボーイングとエンブラエルとMRJ

ペルー、ボリビアの旅行備忘録を書いている途中ではありますが、気になるニュースがあったので、ちょっと自分なりの意見を書きたいと思います。

 

そのニュースというのがこちら

ボーイングとエンブラエル、民間機の合弁会社設立へ MRJさらなる苦戦も(Aviation Wire)

headlines.yahoo.co.jp

 

かねてより噂されていた、ボーイング(USA)とエンブラエル(ブラジル)の小型機部門提携の話。とうとう本決まりになりそうです。これは三菱航空機MRJの販売にも影響しそうです…。もともとボーイングとカスタマーサポート契約をむすんでいた三菱航空機ですが、どうなってしまうのか、自分なりに考えてみます。

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TRAVELIST

 

旅客機業界の2グループ化

世界中の150席クラス以上の旅客機は、ほぼ2社のどちらかと言って過言ではない。

A社とB社。そうエアバス(Airbus)とボーイング(Boeing)です。そもそもエアバスボーイングに対抗するためにヨーロッパの航空会社か国を超えて手を組んでできた会社でした。もちろんその2社以外にも、旧ソ連地域などそのクラスの航空機を手がけている航空機会社がないわけではないが、“売れ筋”はその2社に限定されれいます。

一方で、100席クラスのリージョナルジェトはボーイングエアバスもラインナップには存在せず、エンブラエルボンバルディア(カナダ)などがシェアを争っていた。その争いに三菱は割って入ろうとしていたわけです。

さて、今回の提携の背景は、エアバスボンバルディアの提携(2017年10月)が発端とされています。

これに対抗するかのようにボーイングエンブラエルは提携を模索し始めたようです。当初はブラジルの重要な企業(軍用機も作っている)であるエンブラエルボーイングに買収されることにブラジル政府が難色を示しているとされていましたが、民間機事業に限り合弁会社をつくるということで決定しそうです。

これでリージョナルジェトもふくめ、旅客機製造業界は2グループに再編されそうです。

 

MRJはどうなるのか

では三菱航空機MRJはどうなってしまうのか?ボンバルディアのCシリーズは100席以上であり、70-90席クラスのMRJとは直接ライバル関係にはなりませんでした。当初はE Jetシリーズ(70〜120席クラス)で実績のあるエンブラエルに対し、設計の新規性およびボーイングとの提携によるカスタマーサポートで対抗していく予定でした。しかし、エンブラエルもE JetにMRJと同系列の新規エンジンを採用するなどリニューアルしたE2シリーズ(90席クラス〜)を発表。相次ぐ計画の延期でE2シリーズに先行されてしまい、MRJの優位性は少なくなってしまいました。

ところで、アメリカのエアラインパイロット組合の協約である”スコープ・クローズ”というものがあります。これは大手航空会社のパイロットと会社の労働協約で、大手航空会社のパイロットの職を守るため、リージョナル航空会社(つまり、下請け。パイロットの賃金が大手に比べると低い。)には70席以上のリージョナルジェトの運行を認めないというものでした。この協定は90席に緩和されると予測されており、MRJも90席クラス(MRJ90)を先行して開発、E2シリーズも90席クラスをもっとも小さいものとして開発していました。

しかし、予測に反しいつまで立っても、スコープ・クローズは緩和されず、最近の発表でMRJは70席クラスをアメリカ市場でのメインターゲットにすることを発表していました。MRJ70はMRJ90納入の翌年、2021年には納入できるものとしています。エンブラエルには70席クラスの新規開発計画はなく、いまのところ直接的ライバルは存在しないことになっています。

 

MRJボーイングに買収される???

さてここからは憶測です。この提携によりMRJ販売網が立たれ、開発が頓挫するのではと言われていますが、そんなことはないと想像します。三菱重工ボーイングにとって、777や787の主要パーツサプライヤーですから、さすがにMRJ計画を無下につぶすわけにはいかないと思われます(そんなことしたら三菱重工とのパートナー契約にも影響してしまう…)。

もし、このままスコープ・クローズが緩和されなかった場合に、アメリカでのリージョナルジェトの主要マーケットと70席クラスをボーイングが、みすみすそのままにしておくでしょうか?

そうなったときにボーイングの取れる戦略は3つです。

  1. MRJの販売をサポートする
  2. エンブラエルにE2シリーズの短縮版(70席クラス)を開発させる
  3. MRJを買収してしまう

1はMRJの販売サポートをする。これは現状維持ということです。三菱重工ボーイングの大切なパートナーであり、このクラスは譲るよという方針。なくはないでしょう…。しかし、うまく行けばよいのですが、新規参入である三菱の体力や販売網が心配になります。

2に関しては、三菱重工との友好関係を損ねる可能性があります。またいくら派生型とはいえ、開発にすこし時間がかかることになります。

一方で3はボーイングにとってはメリットがあります。MRJの販売が苦戦しそうと判断したときに、MRJ計画(もしくは三菱航空機)を買収してしまうという方針です。そしてボーイングの飛行機としてMRJを販売する(組み立ては日本?)。三菱にも恩を売って、友好関係を維持し、さらに70席クラスの新規開発機を手に入れるという事ができます。実際、ボーイングマクドネル・ダグラスを買収した際に、MD-95として計画されていた飛行機を、サイズ的には737とかぶるものの、マクドネル・ダグラス機を運行する航空会社が共通性から737への発注変更を拒否したため、B717として開発・生産したという実績があります。

日本の旅客機ファンとしてそうなってしまうと寂しい気もしますが…ボーイングならやりかねないと思ってしまいます。

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