小笠原空港問題
前回ちらっと書いたので、もう一度この問題をしっかり取り上げたいと思います。
小笠原空港問題。
私、職業柄長期休暇は取りづらいので、小笠原に船で行くことは当分難しそうです。小笠原に空港ができることを心待ちにしております。小池都知事は空港建設を推進しており、その点では期待しています。
しかし、1000m以下での建設を想定していると。
本当に1000mで成り立つのか?ATR42-600Sが使用可能なのか?よく考えてみてください。
小笠原諸島 父島の位置
(↑ 父島と羽田空港)
空港建設が予定される小笠原諸島 父島は東京の約1000km 南南東に位置します。羽田空港から父島 洲崎地区までの距離は直線距離で967kmです。
悪天候時などにダイバード(到着空港の変更)可能な場所は、羽田への引き返し(約1000km)、八丈島(約700km)、硫黄島(約270km)です。
(↑ 父島と八丈島)
(↑ 父島と硫黄島)
必要な航続距離
これを考えるには施設の前提が必要です。父島まで航空燃料をタンカーで運ぶか?ということ。もし、小笠原空港給油施設を設ければ、航続距離は短くて済みますが、その分の費用が運賃に上乗せされてしまうでしょう。なので、給油は東京で行うほうが無難と考えます。
給油が父島でできないのならば、往復分の燃料を羽田で積んで飛んでいくのが最も簡単です。そのためには単純計算で2000km以上の航続距離が必要です。また、その場合、ダイバードで羽田引き返しも可能なので、制約は必要ありません。
父島以外でのテクニカルランディングによる給油(給油のための経由)を考えると、硫黄島経由が考えられますが、この場合、羽田 - 父島 - 硫黄島 - 羽田になるかと思います。つまり硫黄島まで無給油ということになります。そうすると、硫黄島に着陸できない場合、父島に戻る必要が出てきてしまい1600km以上の航続距離が必要です。それを避けるには、羽田 - 硫黄島 - 父島とする方法も考えられますが、この場合、硫黄島に着陸できなくなるとダイバード先は父島になり、結局1600km以上の航続距離が必要です(羽田 - 硫黄島(通過) - 父島 - 硫黄島を無給油で飛ぶ必要がある)。そして、硫黄島には自衛隊のための航空燃料輸送が行われているとはいえ、価格の上乗せにはなってしまいそうです。
八丈島でも一応給油はできそうです(ただANAなどは行っていないような…。)。ただし、輸送費がかかるので燃料価格はやはり高いでしょうか?八丈島で給油する場合往復八丈島に立ち寄っても良さそうな気がしますが、結局、ダイバードの関係で1700km以上の航続距離が必要です。つまり、父島行きの途中、八丈島で給油した後、父島に向かい、父島を無給油で離陸すると、八丈島に着陸できなかった場合、本土まで飛行する必要性が出てくるためです。
一方、父島に給油施設を作った場合はどうでしょうか?
その場合、父島行きのダイバード先を硫黄島に設定すれば、1300kmの航続距離です。
つまりまとめると、
父島での給油不可、直行便:2000km以上の航続距離が必要
父島空港で給油不可、テクニカルランディング必要:最低でも1600km以上の航続距離が必要
父島空港で給油可能、直行便:1300km以上の航続距離が必要
上記いずれも、ダイバード先が不便な場所になることは避けられず、羽田引き返しできるようにするためには2000km以上の航続距離が必要。
この条件を満たす飛行機は?
MRJなどのリージョナルジェトや、DASH8-Q400では航続距離は2500km以上あり、航続距離の条件を満たしますが、滑走路長さが1200〜1500mほど必要となります。
ATR62-600Sは800mの滑走路で運用できますが、航続距離は1500km程度と言われており、父島に給油施設を設ける必要があります。
もしくは、硫黄島にも乗り換え専用の空港を作り、硫黄島までB737やA320、MRJ で飛んで、そこで、ATR42に乗り換える。これは成り立ちそうです。
セスナ208やビーチクラフト1900あたりまで機体を小さくすれば、1000m以下の滑走路でも直行便が可能だと思いますが、輸送量は小さいため運賃は高めになるかもしれません。
小笠原空港はなんのために作るのか?
もし、急患輸送や緊急時のために作るのであれば、この1000m以下とういう規模で成り立つでしょう。しかし観光等への活用も視野に入れれば、ある程度の規模の航空機の乗り入れが求められます。
本当に1000mで大丈夫なのか、機材選定を含めて再検討するほうが良いのではないでしょうか?
そして積極的に短滑走路で使用できるMRJを開発してほしいものです。